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interview

にじのフモトでよろしく#06

七戸の食材の魅力を
引きたてるワインを!
29歳が目指すフロンティア。

小又 貴朗さん

出身地:青森県上北郡七戸町 移住年:2014年
職業:農業・建設業・ワイナリー経営
   (㈱七戸ワイナリー代表取締役/㈲上成建設代表)

1990年生まれ。青森県立七戸高校卒業。平成国際大学法学部卒業後、埼玉県のガス会社で技術者兼営業職として勤務。
2014年、2年間のサラリーマン生活に終止符を打ちUターン。
家業の農業に携わる。2018年、妻・里佳子さんと結婚。

七戸の恵みをワインに。
生まれたてのワイナリー。

「植え付け、成長、収穫と、成果が出るまでの過程が目に見えて分かるのが農業の楽しみです。ブドウも米も、手間をかければ応えてくれる」と、小又貴朗さんは言います。
2014年に七戸町にUターン。同時に家業の農業を継ぎ、米と山ブドウを栽培の柱としてきました。町内の耕作放棄地を買い取って少しずつ規模を拡大し、5年が経つ今では水田が約100ha、ブドウ畑が約6haに。合わせて東京ドーム約23個分にもなる農地を、両親や妻の支えを受けて管理しています。

2018年から、山ブドウに加えヨーロッパ原産のワイン用ブドウ栽培も開始し、19年2月には株式会社七戸ワイナリーを設立。そう、小又さんの夢は、〝メイドイン七戸〟のワイン作りです。栽培から醸造までを一貫して手がけ、七戸町にワイン文化を根付かせようと奮闘しています。

「七戸はやませ(夏場に大平洋から吹きあげる冷たい偏東風)の影響を受けるから、米作りにはあまり向いていない。でも、ワインづくりでは冷涼な気候が個性になる。地元の気候に最も適したブドウを今も探っている最中です。多品種の野菜が穫れる七戸はもともと土壌が豊かですし、いいものが作れる可能性を感じています」

夢破れてUターン。
待っていたのは…。

七戸で生まれ育ち、地元の高校から埼玉県内の大学へ進学。警察官を目指し法学部を選びました。しかし卒業時に受けた試験は不合格。ガス会社に就職後も試験勉強を続けていましたが、激務が徐々に気力を奪っていきました。
「通勤に片道2時間かかっていたので、朝6時に家を出て、帰りはほぼ毎日深夜1時頃。営業兼技術者として、顧客回りをしていると週末もあまり休めない。そんな生活を2年続けたら、身体が悲鳴を上げました」
体調を崩し、やむをえず退職。電話ごしに父が言った「帰って来る?」の一言に、心から救われたといいます。
「だから、帰ったらしっかり家業を手伝おうと決めてました」

子どもの頃からの夢に決別し、水田と山ブドウ畑を父から引き継いだ小又さん。米は農協へ出荷、山ブドウは自社で加工しジュースにして販売していましたが、商品の幅を広げるべく、山ブドウワインで名をはせる『くずまきワイナリー』(岩手県葛巻町)へ研修に出向きました。
「ブドウを収穫し、破砕してタンクに入れ、酵母を入れて発酵させる。工程は単純なのに、できあがるワインはそれぞれ違うんです。ブドウの糖度や発酵温度などさまざまな要因が関係していると聞いて、視界が開けた気がしました。いいものを栽培するだけでなく、自分の手でさらにいいものにする。お客さんに届けるところまで自分でできたら、楽しいだろうって」

農業をやりたい人に、
七戸はうってつけ。

2018年にはジェトロ(日本貿易振興機構)の地域貢献事業に採択され、良質な白ワイン産出国として知られるルクセンブルクを訪れました。
「生産者がみんな個性的で、土壌にしろ栽培にしろ信念がすごくある。いいと思う畑なら、どんなに遠くても買い取ってワインを作る。日本だと他県に畑を持つようなもので、効率を考えるとなかなかできないですよ。『いいワインのためなら』って、そういうことを小規模ワイナリーが平気でするからすごい」

異国でワイン作りへの情熱に触れ、小又さんの夢がくっきりと輪郭を取り始めました。19年現在、山ブドウのほか10種類ほどヨーロッパ品種を栽培しています。
「ジビエ料理には山ブドウのワインが合うと言われています。同じ山の恵み同士、相性がいいんでしょうね。一方、七戸はにんにく、トマト、長いもなどの畑作や、肉用牛などの畜産も盛んです。山ブドウの可能性を追求しつつヨーロッパ品種でも、食材の個性を引き立てるワインが作れたらと思います」

〝100年事業〟と言われるワイン作りへの挑戦は始まったばかり。人員や資金、技術など、課題が多いことは事実です。しかし小又さんは、今度こそ夢を手放す気はありません。29歳の笑顔からは、問題をクリアする過程すら楽しんでいるような明るさが伝わります。

「七戸は農業を始めるには絶好の場所。空いている農地も多いし、機械やノウハウは僕が提供できます。国道沿いでアクセスがいいので、暮らすにも働くにも困らないし。…ってことで、農業を始めたい人、ワインに興味がある人は、ぜひ僕のところに来てください!」としっかりワイナリーをPR。また、現在計画中ですが県立七戸養護学校の在校生・卒業生を中心に呼びかけ、農福連携に向けても動き出しています。
現在の事務所は国道4号沿いにあり、かつての大型飲食店を買い取った建物。ガラス張りの内装を生かし、外からも見えるオープンな醸造所へと、この秋生まれ変わる予定です。