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interview

にじのフモトでよろしく#05

ラーメンとSNS。
マーケティングと〝好きなもの〟を
軸に繁盛店を目指す。

佐藤 聖史さん

出身地:青森県上北郡七戸町 移住年:2017年
職業:飲食店経営(居酒屋ふじと 店主)

1973年生まれ。十和田工業高校卒業。製鉄所、宅配ピザ店店長、レンタルビデオチェーンエリアマネージャーなどさまざまな職業を経験し、東日本各地で暮らす。東北は6県すべてに在住経験あり。
2017年、妻・長女・長男とともにふるさと七戸町に移住。
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“願いがかなう絵馬のまち”で
営むラーメンが評判の居酒屋。

佐藤聖史さんが七戸町にUターンし、母と妹が20年以上切り盛りしてきた『居酒屋ふじと』を引き継いだのは2017年。まず取り組んだのが、メニューの刷新でした。
「七戸町には意外と王道の居酒屋がないんです。だから七戸では食べられない定番の居酒屋メニューを揃えました。やきとり、唐揚げ、卵焼き。安くて早くておいしくて、気楽に食べられる。刺身は他のお店でも出すから置かない。代わりに始めたのがラーメンです」
研究を重ねて生み出した豚骨や煮干しのスープと、七戸町内の製麺所にオーダーしたこだわりの麺で作る1杯が〝〆のラーメン〟の枠に収まらない美味しさだと評判に。今では、佐藤さんのSNSを見た人が遠方から訪れることもあります。

ちなみに佐藤さん、幼い頃からラーメン好きで、色々な店を食べ歩きました。子どもの頃の夢が「ラーメン屋さん」だったことは、店を始めてから思い出したとか。
古くから絵馬を奉納し祈願する文化*が息づく七戸町のキャッチフレーズは、〝願いがかなう絵馬のまち〟。30代半ばまでは、「ふるさとに戻って居酒屋でラーメンをつくる」など、想像もしていなかったという佐藤さんも、この町で夢を叶えた1人です。
*南部七戸小田子不動堂(こだっこふどうどう)に、17~19世紀にかけて奉納された絵馬は、国指定有形民俗文化財に指定されています。

どんな地域でも繁盛店はつくれる。

「昔から、1か所に留まって1つのことをずっとやる、という考えが僕にはなくて。そのときやりたいことをやっちゃうんですね」と佐藤さん。十和田工業高校を卒業後、千葉県の鉄工所を皮切りに、エネルギー関連会社、飲食店へ勤務し、宅配ピザ店では店長を経験。多彩なキャリアの持ち主です。

2003年に長女が誕生した頃は、大手レンタルビデオ店のエリアマネージャーとして東北各地を転勤して回る日々でした。
そんな生活に転機が訪れたのは2011年。3月11日、東日本大震災が発生。佐藤さんは復興作業に追われ、数か月間ほとんど自宅に帰れませんでした。
「僕より大変だったのが福島に住んでいた家族。原発事故の関係で幼稚園児の長女が、暑い時期でも長袖を着せられて遊んでいるのを見たときは辛かった」

妻が青森市出身ということもあり、県内に戻ることを考え始めた佐藤さん。一度は県南の中心都市・八戸市に移り住みます。しかし、妹が町を出ることになり、1人残る母から、『ふじと』の承継を打診されました。
「マーケットの規模を考えると不安はありました。でも、不便な場所で繁盛しているラーメン屋とかもあるじゃないですか。どんな地域でも繁盛店は作れるはず。知恵を出せば何とかなるんじゃないかと」

37歳の挑戦。店主となり1年ほどは八戸の自宅から通っていましたが、2017年4月、ついに一家で七戸町に移住。
様々な銘柄の日本酒や季節ごとのメニューも出すようにしたほか、SNSで情報発信を始めました。実は佐藤さん、インターネットが趣味で、ウェブ関係の知識が豊富。依頼に応じてインターネット接続設定やトラブルサポートを行う副業もしています。

〝リアル〟なつながりの
大切さに気づいた。

佐藤さんの仕事は9時30分頃から始まります。町内で仕入れを済ませて10時には店に戻り、11時からランチ営業。13時に店を閉めると、夜の仕入れのため今度は十和田市へ。食材別に数軒の店を回り、17時の開店に間に合わせるため急いで仕込みに取りかかります。23時に閉店。クローズ作業を終えて帰宅するのは深夜です。
妻と母のほかスタッフも2名いるとはいえ、店主の身は忙しい。働き方は「移住前とあまり変わっていないかも」と話す佐藤さん。

一方、移住して大きく変わったのは、家族の笑顔が増えたこと。
「半年~2年で転勤する生活が長かったから、妻は大変だったでしょう。でも今は、息子の友だちの親御さんや店のお客さん、顔見知りが増えたみたいです。妻の表情が明るくなったのが、戻ってきてよかったところかな」
家族で過ごす時間も増えました。長女が八戸市内の高校で寮生活を送る佐藤家ですが、中学生の長男は学校帰りに毎日店に寄り、一緒に夕食をとるのが日課です。

「七戸は良くも悪くも人と人とのつながりが深いし、濃い」と町の印象を語る佐藤さん。
「お客さんの中には、気さくな母との会話を楽しみに来るが、あまり料理を注文しない人もいて、最初は反発しました」
店に出始めた頃は「良い商品さえ提供していればお客さんは来てくれる」「PRと交流はSNSで」と考え、積極的に接客することはなかったといいます。
「でも、息子の学校とか、仕事以外で知り合った人がお客さんを連れて来てくれることが増えて。ネットじゃない〝リアル〟のつながりって大事だなと、最近分かってきたところです。昔は人とのつながりをしがらみと感じて、嫌だったんだけど。僕も年取ったってことかな」
苦笑しながら、大好きなビートルズの曲が流れる店内で、佐藤さんは開店の準備をします。今夜もたくさんの話したいことを抱えてのれんをくぐる、常連客たちのために。