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interview

にじのフモトでよろしく#08

地域おこし協力隊を経て
コーヒーショップ開店。
七戸からamor(愛)を
広げたい!

花松 美佐さん

出身地:東京都江戸川区
移住年:2018年
職業:コーヒーショップオーナー

1975年生まれ。2018年、七戸町出身の夫・娘とともに一家で同町に移住。同時に「しちのへ暮らしコンシェルジュ」(地域おこし協力隊員)に着任する。2021年3月で任期満了。同6月にコーヒーショップ「amor coffee」オープン。

県内各地を旅して
気づいた町の本当の魅力

下町で生まれ育った江戸っ子の花松美佐さんは一家で夫の出身地・七戸町に移住。「七戸町のことを知りたい」と、移住前に地域おこし協力隊に応募し、「しちのへ暮らしコンシェルジュ」に着任しました。
「水がきれい! 星空がきれい! 野菜が安くておいしい! 夏も涼しい!」
都会育ちの花松さんにとって、七戸暮らしは新鮮な魅力でいっぱい。しかし協力隊員として七戸町をPRしたり、移住希望者に七戸町を案内したりするうちに疑問が芽生えてきました。
「私が最初に感動したことは“七戸の魅力”じゃなく“田舎の魅力”では?と思ったんです」
「 “青森県の中の”七戸の魅力は?」と視野を広げ、活動する地域おこし協力隊員を訪ね、県内各地を回りました。そして感じた七戸町の“本当の魅力”とは。
「人の温かさ。どこでも優しい人は多いですが、温かさの質が違う気がします。七戸の人は警戒心も強いけど(笑)、一度仲良くなったらとことん面倒を見て、心配して、助けてくれる。コロナ禍でお店を始めて大変なこともありますが、支えられています。だから恩返しと言うとおこがましいけど…『七戸町にあって良かった』と思われるお店にしたい」

地域おこし協力隊は
「たくさんの出会いと学びを
くれる宝の山」

花松さんは2021年7月、コーヒーショップ「amor coffee(アモルコーヒー)」を開店。仕事の合間に県内各地の自家焙煎コーヒー店を回って修行先を探し、1年余りの準備期間を経て開店にこぎつけたお店です。起業のきっかけは協力隊員時代、「人が集まって学びあえる場所を作りたい」と考えたこと。協力隊時代の経験とオープンまでの経緯を、こう話します。
「辛さも楽しさも混在した濃密な3年間を全うして私に返ってきたのは、自分の成長と人との出会い、つながりです。覚悟を持ってやりさえすれば、普段の生活では出会えないようなたくさんの人の姿を見て、学び続けていける。協力隊活動はチャンスがいっぱいの宝の山だと思います。私も協力隊だからこその出会いがあり、出会いを生かせる場所もあって、それらがつながってここまで来れました」

また、花松さんは協力隊時代、町内有志で作る「しちのへ移住サポーターの会」事務局を兼任し、現在も役員を務めます。そのつながりを生かしてこんなイベントを開いたことも。
「協力隊2年目の頃、会のみんなに呼びかけてヴァンラーレ八戸FC(※)の応援に行きました。当時J3昇格のために観客動員数を伸ばそうということで50人くらい集まって。ただ行くのじゃつまらないからとお揃いのTシャツを作って、バスを借りて」
取材時はコロナ禍のため中断していましたが、協力隊員同士がお互いの地域に短期移住する、いわば“協力隊交換留学”も進めているとのことでした。

※ヴァンラーレ八戸FC…青森県八戸市、十和田市、五戸町、三戸町、階上町、田子町、南部町、おいらせ町、新郷村、三沢市、七戸町、六戸町、東北町、横浜町、野辺地町、六ヶ所村をホームタウンとするサッカークラブ。2019年にJFL(日本フットボールリーグ)から昇格し、Jリーグ(日本プロサッカーリーグ)のJ3リーグに所属。

こだわりのコーヒーと
プチ・アンテナショップ
コーナーも。
出会いのある空間

七戸町蒼前。十和田市からもほど近いamor coffeeは内装に廃材を活用するなど、環境に配慮しつつ温もりを感じさせる空間。生産地から提供までしっかり品質管理されたスペシャルティコーヒーの販売店と、フリースペースが一体となっています。
「初めてのお客様がいらしたときに地域おこし協力隊の仲間や友達が居合わせると、私が勝手に間を取り持ったりして(笑)。『初めて来た気がしない』っていう方も多いですね」

来客が自由に使えるパソコン、大きなモニター、セキュリティ対策万全のフリーWi-Fi環境など、設備には地元の高校生の意見を取り入れたのだとか。
「ちゃんと希望を聞く大人がそばにいることを子どもたちに伝えたかった。信頼できる人が七戸町にいれば、離れても帰ってくる理由になるかなって。私も七戸町で子育てする一人。子どもや子育て世代に寄り添えるお店にしたい」
 店内にはベーグルやリンゴジュースといったコーヒー以外の商品やチラシ、フライヤーも置かれています。県内外にいる花松さんの地域おこし協力隊仲間が関わる商品や、イベント情報、県内の特産品を集めた、さながら小さなアンテナショップです。
「七戸の人にいいもの、おいしいものを届けたいのはもちろん、町外のことを知るきっかけになればという思いもあります」

店名の『amor(アモル)』は
ラテン語で『愛』。

「恋愛の他にも地域愛とか人間愛とか色々ありますよね。ここからそんな愛を発信して愛あふれる町、県、国、地球…と広めていけたらと。夢が大きすぎかもしれませんけど(笑)」
今後は感染対策を徹底しながら、店内フリースペースでセミナーやイベントを開催予定だそう。扉を開ければ芳醇なコーヒーのアロマ。花松さんの笑顔、そして新たな人やモノとの出会いが、きっと訪れる人を待っています。